1970年にデレク・アンド・ザ・ドミノスがリリースした『Layla and Other Assorted Love Songs』収録曲。「Pretending」では未だ喉がウォーミングアップ中な印象を受けたが、この曲からはクラプトンが安定したヴォーカルを披露。その歌声は力が抜けて聴きやすく、まるで語るような歌い口だが、ときおりブルースらしい唸り節も用いてパワフルさも感じさせる。百戦錬磨のシンガーでもあるクラプトンの技量を示すものだ。
1994年リリース『From the Cradle』収録曲。ライヴでよく演奏されるブルースで、いくつかのCDやDVDで聴いたことがあるが、今回の演奏も味わい深かった。クラプトンがキャリアを重ねるにつけ、その歌声が枯れてハスキーになっていることによるのだろう。このような声質の変化が、ロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターといった往年のブルースマンと似通った雰囲気を醸している。
1975年リリース『E. C. Was Here』収録曲。クラプトンはアコースティックギターに持ち替え、ネイザンもアコースティックベースを使用していた。この曲ではクラプトンのギターソロが白眉であった。指弾きにより奏でられる硬軟・緩急・強弱が自在なソロは、まさに「Clapton is God」といったところで、ギターを嗜む人でなくとも、そのパフォーマンスが達人芸であることを感じただろう。
07. Nobody Knows You When You’re Down and Out (Jimmy Cox)
1970年リリース『Layla and Other Assorted Love Songs』収録のエレクトリックver.と、1992年リリース『Unplugged』収録のアコースティックver.があり、どちらも名曲。今回の公演では、初日(13日)のみエレクトリックver.が演奏され、以降はアコースティックver.が演奏された。印象としては『Unplugged』での演奏よりも静かで、ミステリアス。クラプトンのヴォーカルは囁くようで、激情のままに許されぬ想いを歌った原曲とは違い、円熟した大人の歌声を披露していた。
1969年にクリームがリリースした『Goodbye』収録曲。再びエレクトリックセットでの演奏が始まる。「I Shot the Sheriff」と同じく、この曲でも演奏の抑揚によって場内を沸かせるクラプトン。終盤、静かで美しいアルペジオから、バンド一体となって疾走するパートに移行するとき、観客の興奮はピークに達した。この曲でのソロを聴いて改めて感じたが、クラプトンのギターサウンドは不思議。年月を経るごとに歪みが減り、極めてクリーントーンに近いのに、そのサウンドは太く伸びやかで迫力がある。
1968年にクリームがリリースした『Wheels of Fire』収録曲。さらに辿れば、伝説のブルース歌手ロバート・ジョンソンに発する楽曲。この曲のソウルフルな魅力を表現するためだろうか、ここまでの演奏に比べて、ギターサウンドが荒々しい印象を受けた。歌声も力強く張りがあり、この名曲へのクラプトンの思い入れが感じられる。
14. Little Queen of Spades (Robert Johnson)
2004年リリース『Me and Mr. Johnson』収録曲。「Crossroads」に引き続き、この曲もロバート・ジョンソンのカバー。ただし「Crosssoads」がロック的要素を付加したアレンジになっているのに対し、この曲は純粋なブルースの魅力を描き出すようなアレンジになっている点に相違がある。キャリア初期とキャリア後期で、ブルースとの接し方も変わってきたということだろうか。
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