今回ご紹介するのはローリング・ストーンズの「How Can I Stop」です。
How Can I Stop (1997)
この曲について
「ロックのバラードで好きな曲は?」という問いは悩ましい。エリック・クラプトンがパティ・ボイドとの一夜を描いた「Wonderful Tonight」は有名な「Layla」と対を成す名曲だ。ボン・ジョヴィが「たとえ天が裂け、言葉がリズムを刻まなくなっても、最後の瞬間まで君を想う」と歌い上げる「Always」は最強のラブソング。ゲイリー・ムーアの「Still Got The Blues」では泣き叫ぶギターに胸を締め付けられる。
これらに並ぶ名バラードとして、今回ご紹介したいのが、ローリング・ストーンズが1997年にリリースしたアルバム『Bridges To Babylon』の収録曲「How Can I Stop」である。ローリング・ストーンズを知る方からは「ストーンズには名盤や名曲が多いのに『Bridges To Babylon 』からの選曲?」と苦情が来そうなところ。確かに 『Bridges To Babylon』 は複数の音楽プロデューサーと組んで制作した影響か、全体を通して聴くと散漫な印象を受けがちで、総合的な評価はあまり高くない。しかし、ひとつひとつの楽曲のクオリティは存外に高く、あちこちにキラリと光る良曲が埋もれている。
その良曲の最たるものが、アルバムのラストを飾る 「How Can I Stop」。ローリング・ストーンズといえば歴史上で最も有名なロックバンドのひとつだが、この曲のアプローチはジャズっぽい。深く豊かに鳴るベースに合わせて、艶のある響きのギターが歌い、軽やかなドラミングが華を添え、キース・リチャーズのハスキーなヴォーカルが乗っかる。
言うまでもないかもしれないが、キース・リチャーズはローリング・ストーンズのギタリストであり、ヴォーカルはミック・ジャガー。しかし、この曲はミックが歌えば微妙な仕上がりになっていただろう。理由は単純で「曲のパワー<声のパワー」となり、この曲の持つ情趣を消し飛ばす恐れがあるため。一方、キースは声量やテクニックではミックに及ばないが、その歌声は不思議と曲の魅力を引き立てる。この曲での掠れた囁くような歌い口も、なんとも幽玄で味わいがある。
ローリング・ストーンズはいわば「ロックンロールの権化」であり、代表曲として挙げられるのはジャキジャキとロック然としたサウンドの楽曲が多い。しかし、そのキャリアの中では「How Can I Stop」のようにレイドバックした名バラードを生み出していることにも要注目。また、キースが歌う楽曲には「Can’t Be Seen」「Happy」「Slipped Away」などキースにしか歌えない=ストーンズのアナザーサイドを示す名曲が多いため、ぜひご一聴いただきたい。
歌詞 & 和訳
You offer me
All your love and sympathy
Sweet affection baby
It’s killing me
‘Cause baby baby
Can’t you see
How could I stop
Once I start baby
How could I stop
Once I start
How could I stop
Yeah yeah
How could I stop
Once I start
You look at me
But I don’t know what you see
A reflection baby
Of what I want to be
I see your face
And I want to roll with it
But how could I stop
Baby how could I stop
How could I stop
Stop it, stop it
If I could, I’d take you all the way
Baby, baby listen what I say
There’s even some things
That I just would not pay
‘Cause how could I stop
If I start babe
How could I stop
If I start
Start with you
How could I stop
If I start, baby
How could I stop
If I start with you
It’s too easy to lay here at your feet
I couldn’t take the heat
There’s somewhere else
Maybe you should go
Baby maybe baby just a further down the road
How could I stop
If I start with you baby
How could I stop
How could I stop
Once I start
You tell me baby
Once I’ve started with you
How could I stop
Once I start
Stop, stop, stop
お前は俺に与えてくれる
すべての愛と思いやりを
なんて甘い想いだろう
もう俺は死にそうさ
だからさ、ベイビー
分かってくれないのか
どうやって止まればいい
一度始めてしまったら
どうやって止まればいい
一度始めてしまったら
どうやって止まればいい
イエー、イエー
どうやって止まればいい
一度始めてしまったら
お前は俺を見つめるけれど
何が見えてるのか分からない
俺がなりたかった人間の
面影が映ってるのか
お前を見つめていると
流れに任せてしまいたくなる
でも、どうやって止まればいい
ベイビー、どうやって止まればいい
どうやって止まればいい
どうやって、どうやって
できることなら
どこまでも連れていきたい
ベイビー、俺の話を聴いてくれ
決して渡せないものがあるんだ
どうやって止まればいい
俺が始めてしまったら、ベイビー
どうやって止まればいい
俺が始めてしまったら
お前と一緒に始めたら
どうやって止まればいい
俺が始めてしまったら、ベイビー
どうやって止まればいい
お前と一緒に始めたら
お前の足元に横たわるのは簡単だ
とても耐えられないんだ
他に男がいるなんて
ベイビー、行ったらどうだい
その道のずっと向こうまで
どうやって止まればいい
俺がお前と始めたら、ベイビー
どうやって止まればいい
どうやって止まればいい
一度始めてしまったら
教えてくれよ、ベイビー
俺がお前と始めたら
どうやって止まればいい
一度始めてしまったら
どうやって止まれば…
収録アルバム
- Flip the Switch (Mick Jagger / Keith Richards)
- Anybody Seen My Baby (Jagger / Richards / k.d. lang / Ben Mink)
- Low Down (Jagger / Richards)
- Already Over Me (Jagger / Richards)
- Gunface (Jagger / Richards)
- You Don’t Have to Mean It (Jagger / Richards)
- Out of Control (Jagger / Richards)
- Saint of Me (Jagger / Richards)
- Might as Well Get Juiced (Jagger / Richards)
- Always Suffering (Jagger / Richards)
- Too Tight (Jagger / Richards)
- Thief in the Night (Jagger, Richards, Pierre de Beauport)
- How Can I Stop (Jagger / Richards)
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