アマダイを食べる – 上品なうまさに悶える

これまでフナゴンズイといった珍しい魚味について記してきた当ブログですが、たまには美食について書くのもいいだろうと思いまして。今回は世間一般に高級魚として取り扱われる魚「アマダイ」の味わいについて書いてみます。

アマダイという魚

マダイ・クロダイ・レンコダイなど、一般的に「タイ」と名の付く魚は、スズキ目スズキ亜目タイ科に分類されます。

しかし、アマダイはスズキ目スズキ亜目アマダイ科に分類される魚で、実はタイの仲間ではないのですね。言われてみれば、平べったくて体高があるタイと、するりと細長いアマダイは別種と言われてもさほど違和感はありません。

今回入手したアマダイは体長30cmほどの個体。アマダイにもアカアマダイ・キアマダイ・シロアマダイなどの種類がありますが、このアマダイは顔つきや体色といった特徴からアカアマダイであると推察されます。桜花色の鱗に覆われた体表のところどころに黄金色の縞が入り、非常に美しい魚体です。

このアマダイが売られていたスーパー(の鮮魚店)では、同じぐらいの体長のマダイが1,000円ほどで売られていました。可食部の量で考えれば、マダイに比べてもアマダイは高価な魚といえるでしょう。

まあ、この価格差に関しては、マダイが愛媛県産の養殖による一方、アマダイは養殖が確立しておらず、この魚も釣魚であることにもよるのでしょうが。

旨さを引き出す!

というわけで、アマダイは魚の王様マダイにも劣らないほどの高級魚なのですが、調理するにあたっては難点があります。その難点とは、端的に言えば「身に水分が多い」というもの。

よって、アマダイ料理のコツというものを述べるならば「身に含まれる水分にうまく対処して、旨味を引き出す処理をする」ということになるでしょう。

極端な例を挙げれば、マダイはただ刺身にして皿に盛れば料理として完成しますが、アマダイはそうはいかない。同じことをすれば、おそらく、身から溢れる水分でビチャビチャの一皿ができあがります。

生食をするにしても、焼き霜造り(直火で炙って氷水に落とす)・松皮造り(熱湯を掛けて氷水に落とす)・昆布締め(昆布で挟んで水分を吸い取る)といった調理が適するといいますね。

今回は半身を昆布締めにしました。特に難しいことはなく、アマダイを3枚におろし、皮をひき、骨を抜き、刺身にします。

その刺身に塩をふって、少し水分が抜けたら昆布の上に並べ、別の昆布を乗せて挟み、ラップでくるんで冷蔵庫で30分ほど寝かせば完成。今回は大きな昆布がなかったので、だし昆布を酒で戻して使用しましたが、特に問題ありませんでした。

残った半身は塩焼きにしました。こちらも全体に塩をふって、グリルに入れて焼くだけです。

今回はやりませんでしたが、アマダイは鱗を取らずに油で揚げて食べる調理法(松笠揚げ)も有名ですね。調べてみると、アマダイ以外の魚も同様の調理法で鱗ごと食べられるとか…いつか試してみたいものです。よく釣れるカサゴやメバルからやってみようかな。

アマダイのお味

さて、まずは昆布締めから食べてみましょう。捌いているときは、あまりに身が水っぽいため「本当に刺身で食えるんかいな」と思っていましたが、塩と昆布でうまいこと水分を絞れたようで。

皿に盛ってみると、薄桃色に透きとおる身がなかなか美しい。あしらいを切らしていたため、やや殺風景なのはご容赦ください。

箸でつまんでみると、身から一滴もしたたることはありませんが、表面はしっとりとしています。そのお味は…なんとも味わい深い!

食感は「むっちり」「ねっとり」と表現するのが適切でしょうか、ただ切り身にしたのとは全く違う、舌や歯にまとわりつくような不思議な食感。アマダイの旨味に昆布の風味が合わさって最高の酒の肴になっています。

しかし、アマダイの身のおいしさを味わうのであれば、刺身よりも塩焼きの方が適しているかもしれません。個人的に思うアマダイを焼くときのコツは、写真のようにこんがり焦げるぐらいまで焼いてしまうこと。

前述のとおり水分が多い魚ですので、表面に焼き色が付いたぐらいではイマイチ焼け切らない。 要するに「生焼け」の状態になり、身に生臭さが残りがちなので、その対策として焦げるぐらいまで焼いてしまうわけです。

そうして、うまいこと焼いたアマダイの身は…ふんわりと柔らかくて甘い!その肉の甘さから「アマダイ」と名付けられたとも言われていますが、さもありなん。

まあまあ強く塩をして焼いたにも関わらず、塩辛さを押しのけて、身の甘さが舌全体にじんわりと広がります。これはマダイ(などのタイの仲間)とは全く違った風情で、個人的には「塩焼きならアマダイの方がうまい」と断言したくなる絶佳の美味。

日常的に食べたい!

今回は、島根県に帰省した際に食べたアマダイのお味について書いてみました。非常においしい魚なのですが、私が今住んでいる愛媛県のスーパーや魚屋ではほとんど見かけません。

周りの人に聞いても「アマダイ?食べたことない!」と言われることもしばしば。鮮度が落ちやすい魚なので、地域によってはあまり流通していないのかもしれませんね。

読んでいただいている方々の居住地域でも、なかなか目にすることがないかもしれませんが、個人的には「食べたことがない」で終わらせるには惜しい妙味かと。

料理店ではなかなか良いお値段がするかと思いますが、巡り会った際には賞味してみるのも一興。同じ白身魚でも、マダイともハタともノドグロとも違う、独自のおいしさがあるのですよね。

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