Bruce Springsteen – Thunder Road (紹介&和訳)

今回ご紹介するのは、ブルース・スプリングスティーンの「Thunder Road」です。

Thunder Road (1975)

歌詞 & 和訳

The screen door slams
Mary’s dress waves
Like a vision she dances across the porch
As the radio plays
Roy Orbison singing for the lonely
Hey, that’s me, and I want you only
Don’t turn me home again
I just can’t face myself alone again

Don’t run back inside
Darling, you know just what I’m here for
So you’re scared and you’re thinking
That maybe we ain’t that young anymore
Show a little faith,
there’s magic in the night
You ain’t a beauty, but, hey, you’re alright
Oh, and that’s alright with me

You can hide ‘neath your covers
And study your pain
Make crosses from your lovers
Throw roses in the rain
Waste your summer praying in vain
For a saviour to rise from these streets
Well now I’m no hero that’s understood
All the redemption I can offer, girl
Is beneath this dirty hood
With a chance to make it good somehow
Hey what else can we do now?
Except roll down the window
and let the wind blow back your hair
Well the night’s busting open
These two lanes will take us anywhere
We got one last chance to make it real
To trade in these wings on some wheels
Climb in back, heaven’s waiting down on the tracks

Oh-oh come take my hand
We’re riding out tonight
To case the promised land
Oh-oh Thunder Road, oh Thunder Road
Oh Thunder Road
Lying out there like a killer in the sun
Hey, I know it’s late, we can make it if we run
Oh, Thunder Road, sit tight, take hold
Thunder Road

Well I got this guitar
And I learned how to make it talk
And my car’s out back
If you’re ready to take that long walk
From your front porch to my front seat
The door’s open but the ride it ain’t free
And I know you’re lonely
For words that I ain’t spoken
But tonight we’ll be free,
All the promises’ll be broken
There were ghosts in the eyes
Of all the boys you sent away
They haunt this dusty beach road
In the skeleton frames of burned out Chevrolets

They scream your name at night in the street
Your graduation gown lies in rags at their feet
And in the lonely cool before dawn
You hear their engines roaring on
But when you get to the porch they’re gone
On the wind, so Mary, climb in
It’s a town full of losers
And I’m pulling out of here to win

網戸がばたついて
メアリーのドレスが揺れる
彼女は幻のようにポーチを踊り抜ける
ラジオが鳴るのに合わせて
ロイ・オービソンは孤独な人のために歌う
それは俺で、欲しいのはただ君だけ
俺を家に帰さないでくれ
もう一人になんてなれない

逃げ戻ろうとしないでくれ
俺がなぜここにいるか分かるだろう
だから君は怖がって、考えている
俺達がもうそんなに若くはないなんて
少しばかり信じてほしいんだ
夜にはマジックがあるんだから
君は美人じゃないけれど、素敵だよ
ああ、俺と一緒なら全く問題ないさ

君は隠れ家に閉じこもって
痛みについて考えることができる
君の恋人達から十字架を作ることも
雨の中に薔薇を放り出すことも
救世主がこの通りに立ち上がるのを
虚しく祈って夏を無駄にすることも
俺はもう英雄じゃないって分かってるよ
償いとして君に捧げられるものは全て
この汚れたフードの下にある
なんとか改善できるチャンスと一緒にね
今、他に何ができるだろうか
車の窓を開いて
風に君の髪をなびかせること以外には
夜が破裂してすっかり口を開けている
この車線は俺達をどこへでも連れて行ける
実現する最後のチャンスを手に入れたんだ
この翼を取引して、ホイールに変えて
後ろに乗りなよ、天国はこの先に待ってる

こっちへ来て、俺の手をとって
今夜、俺達は繰り出すんだ
約束の地をつかまえるために
ああ、サンダーロード
サンダーロード
陽の下の殺人者のように横になって
遅れたけれど、走れば間に合うさ
ああ、サンダーロード
じっと座って、しっかり掴まるんだ

俺はギターを手に入れて
どうやってそいつを語らせるか分かった
そして、俺の車は準備できているよ
君の家から俺のフロント・シートまで
長い道のりを歩く準備ができているなら
ドアは開けておくけれど、自由には乗れない
俺が口にしなかった言葉のせいで
君が孤独なのは分かっている
でも、今夜、俺達は自由だ
全ての約束は破られるだろう
君が追い払った男達の目には
亡霊が宿っていた
奴らはこの埃まみれのビーチ・ロードに
燃え尽きたシボレーの骸骨に乗って現れた

奴らは夜道で君の名前を叫ぶ
君の卒業式のガウンは足元でボロボロに
そして、夜明け前の孤独な冷気の中で
君はエンジンが唸るのを聴くんだ
だけど、君が玄関に辿りつくとき
メアリー、奴らは風に乗って消える
この街は敗者で埋め尽くされている
そして、俺は勝利を求めてここを出ていく

収録アルバム

Born To Run (1975)
  1. Thunder Road (Springsteen)
  2. Tenth Avenue Freeze-Out (Springsteen)
  3. Night (Springsteen)
  4. Backstreets (Springsteen)
  5. Born to Run (Springsteen)
  6. She’s the One (Springsteen)
  7. Meeting Across the River (Springsteen)
  8. Jungleland (Springsteen)

ひとこと

ブルース・スプリングスティーンが1975年にリリースした『Born To Run』は、私がロックを聴きだした最初期に買ったアルバムのひとつです。確か中学生の初めごろだったでしょうか…とはいえ、年代的にはリリースから数十年も遅れてはいますが。

私の音楽好きは日本のロックバンド:THE BLUE HEARTSに端を発したため、洋楽を聴き始めても、最初はクラッシュやセックス・ピストルズといったパンク・ロックの楽曲ばかりを聴いていました。当時はセックス・ピストルズのベーシスト:シド・ヴィシャスに憧れており、あの錠前型のネックレスをいつも身に付けていたものです。

そのため、ロックについても「政治的主張や放逸なライフスタイルについて、荒々しい演奏に乗せて歌う音楽」という印象しか持っていませんでした。※パンク・ロックの音楽性も、そのバック・グラウンドを考慮すれば十分に奥深いものと今は思いますが、寡聞な私には表面的な理解しかできなかったというところで。

そんな折に聴いた『Born To Run』は、それまでの私のロック観を見事にぶち壊しました。今回ご紹介する「Thunder Road」は同アルバムのオープニング・トラックですが、この曲は軽やかなハーモニカと繊細なピアノで幕を開けます。「Thunder Road」という荒々しい曲名と、スプリングスティーンがギターを携えたイカしたアートワークから、バリバリのロック・サウンドを期待していましたので、正直、肩透かしをくらった心地でした。

しかし、そんな気分はあっという間には吹き飛びます。まず、ピアノにあわせて語るようなスプリングスティーンの歌声の渋さと表現力に感服!その後、ラヴェルのボレロのようにひとつひとつ楽器が加わっていき、中盤の「Except roll down the window…」と歌い上げるあたりでは、 既にゴキゲンなロック・サウンドが全開となっています。

一体なんでしょう、この類まれなる迫力と疾走感は。サウンド的にはギターが強く歪んでいるわけではなく、ドラムも軽やかで、ベースもゴリゴリ鳴っているわけではありません。むしろ、ピアノが奏でるフレーズが難なく聴き取れるほどに、ライトでクリアです。それなのに、耳と心を鷲掴みにして引っ張られるような心地になるのはなぜなのか。

この点については、楽曲構成の妙によるところが大きいでしょう。「Thunder Road」にはAメロ・Bメロ・サビといった概念がありません。次から次へと新しいセクションを展開していく、ロックの楽曲としては珍しいスタイルです。このようなスタイルを用いることにより、一般的なスタイルよりもメリハリが付けやすくなり「抑えるところは抑えて、盛り上げるところは盛り上げる」という演出がなされている印象を受けます。

もちろん、バンド・メンバーのテクニックが高度であり、演奏の一体感が非常に強いことも影響しているでしょう。また、スプリングスティーンが書く歌詞の内容も、初めは「家を抜け出して、今夜を一緒に過ごそう」という趣旨の刹那的なものでしたが、最終的には「俺は勝利を求めて、敗北者で埋めつくされた街を出ていく」という生き方を考えるような力強いものに変わっていきます。構成・演奏・歌詞といった複合的な要素で、曲中の起承転結を巧みに表現しているといえましょうか。

このように非常に高い完成度となっている「Thunder Road」ひいては『Born To Run』は、前述のとおり、私のそれまでのロック観であった「政治的主張や放逸なライフスタイルについて、荒々しい演奏に乗せて歌う音楽」という印象を見事に覆すものでした。ロックの歌詞は文学的でもよいし、演奏は技術的に高度でもよいし、楽曲の構成は芸術的でもよい…まさに目か鱗!

ロックの多様性に開眼した私は、その後、レッド・ツェッペリンの「スタジオ・ヴァージョンでは5分だった曲が、芸術性を追求した結果、ライヴ・ヴァージョンでは30分になる」というインプロヴァイズの世界にハマりながらも混乱を極めていくのですが、それはまた別のお話になります。

コメント

  1. 匿名 より:

    この曲を検索していてここに行き当たりました。素敵な訳をありがとうございます。
    一か所、roll down the windowは、「(車の)窓を開けて」だと思います。
    昔の車の、手でハンドルをクルクル回して開けるやつですね。

    • kue451 より:

      修正いたしました!確かに、続く「風に髪をなびかせる」との繋がりを考えても、「車の窓を開く」ととらえるのが自然ですね。ご教授、ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました