Scorpions – Sting in the Tail (アルバム紹介)

今回ご紹介するのは、ドイツのハードロックバンドScorpionsが2010年にリリースしたスタジオアルバム”Sting in the Tail”。

アルバムリリースと同時に解散を発表

邦題である”蠍団とどめの一撃”からも察されるとおり、2010年当時、Scorpionsはこのアルバムリリース及びワールド・ツアーをもってバンドを解散(活動休止)すると宣言。

このアルバムの作成にはScorpionsの面々は解散を念頭に置いて取り組んだわけで、その緊張感が表出するように、クオリティは非常に高い。捨て曲はないので悩みどころだが、何曲か取り上げて紹介する。

「有終の美」を飾らんとする気勢に溢れた傑作

代表曲”Rock You Like a Hurricane”を彷彿とさせるギターのカッティングで幕を開ける1.”Raised on Rock”ではロックンロールへの思いを武骨に歌い上げる。クラウス・マイネの歌声は軽快な曲調に合わせて弾むようだが、シャープかつしなやかで衰えを全く感じさせない。ギターのバッキングでBon Joviの”Livin on a Prayer”等で有名なトーキングモジュールを使っているのも新鮮。

タイトルチューンである2.”Sting in the Tail”では、ギターのワウを絡めたカッティングが耳に残る。特にサビではボーカルのさっぱりとしたメロディと粘りのあるギターフレーズの対比がなんとも魅力的。まさにサソリの尻尾がまとわりつくような風情。

4.”The Good Die Young”では一気にダークな曲調となる。このようなパワーバラードは”Still Loving You”等の代表曲にも通じるScorpionsの真骨頂であり、この曲も生死の儚さを力強く歌い上げる名曲。ギターの悲壮な旋律とドラムの乾き切った響きに戸惑ううちに、波のうねりのように分厚く激しいサビに突入する。個人的にこのアルバムで一番お気に入り。

その他も気持ちのいいロックチューンと胸を締めつけるバラードが多数収められた、紛うことなき名盤!

その後のScorpionsは

こんなアルバムを作れるのに解散とは惜しい…と思っていたところ、Scorpionsの面々はこのアルバムに伴うワールドツアーに非常な手応えを感じたようで、バンドは解散を撤回。

ボーカルのクラウス・マイネは「(ワールドツアーの)ゴールが近づくにつれて…2012年12月のミュンヘンだったな。『俺達、まだ終わってなんかいない』って思いが強くなった。俺達の中にいろんなイメージや感情が湧き上がってきたんだ。(中略) ギターを置くにはあまりにも楽し過ぎる」と語ったほか、他のバンドメンバーも同様な内容でインタビューに答えています。

Scorpionsが解散の理由として発表した「Scorpionsの偉大なキャリアを最高の状態で終わらせたい」という姿勢も、長い音楽活動の幕引きとしては理想形のひとつとは思いますが、「楽しすぎるので解散はやめる」という結論もロックバンドらしくて素晴らしい。

現ラインナップで最高齢のクラウス・マイネは1948年生まれで2018年時点では70歳になりますが、クリアでシャープな歌声は健在。バンドも”Sting in the Tail”の後に2枚のアルバムをリリースし勢いは衰えない。今後も末長く活動を続けてほしいものです。

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